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経産省の要請でNITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)が有効性の評価を行っている次亜塩素酸水。
先日、2020年5月28日に開催された第4回検討委員会で、気になる結果が報告されました。
次亜塩素酸水の有効性は現時点では確認されない。
これは、新型コロナウイルスを用いて、国立感染症研究所と北里大学がそれぞれ検証を行った結果に基づくものです。
第4回検討委員会のまとめについては、こちら ※ PDFが開きます
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次亜塩素酸水についての検証結果(途中経過)
いずれも電解(電気分解)して得られた次亜塩素酸水について、新型コロナウイルスを使って検証した結果です。
国立感染症研究所
電解質 | ph | ppm | 結果 | 効果 |
---|---|---|---|---|
塩酸 | 5.0 | 49 | 1分及び5分において99.99%以上の感染価減少 | ウイルスの不活化効果あり |
食塩水 | 2.4 | 19 | ほぼすべての反応時間において、感染価減少率は99.9%未満 | 完全に不活化できず、ウイルスが残っている |
2.9 | 26 | |||
4.2 | 24 | |||
2.5 | 40 | 現時点で感染価減少に関する一定の傾向が捉えられなかった | ||
4.3 | 43 | |||
塩酸+食塩水 | 4.9 | 39 |
北里大学
電解質 | ph | ppm | 結果 | 効果 |
---|---|---|---|---|
塩酸 | 5.0 | 50 | 細胞変性、ウイルス増殖 | 効果が認められなかった |
6.0 | 50 | |||
塩酸+食塩水 | 5.0 | 50 | ||
6.0 | 50 | |||
70%エタノール | 細胞生存、PCR(-) | ウイルスの不活化効果あり |
結果がバラバラ???
pHとppmが似ていたら同じような結果になるのかと思えば、そうでもなく。むしろ逆な結果になっているものもあります。
例えば、国立感染症研究所のpH4.3-43ppmとpH4.2-24ppmですが、これはどちらも食塩水を電気分解した次亜塩素酸水です。
ppmだけで言えば、pH4.3の方が濃度が高いので、本来こちらの方が不活化効果は高いはず。
ですが、結果としては、
43ppm……感染価減少にかかわる一定の傾向が捉えられない
24ppm……ほぼすべての反応時間において、感染価減少率は99.9%未満(いくらかは効果がある)
また、国立感染症研究所では効果ありとなった、pH5.0-50ppm前後の次亜塩素酸水が、北里大学では効果なしと判定されています。
(北里大学で行われた検証では、4種のサンプルにいずれもCPE(細胞変性・1)が起き、ウイルスを除去(不活化)できなかったという結果となりました)
まちまちなのは、なぜ???
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結果がバラバラなのは?
検証方法の違いによるもの?
国立感染症研究所の試験方法は、よく使われるTCID50法。
北里大学は宿主細胞を3日間培養し、細胞の変性とqRT-PCRによるウイルスのRNA titerを測定する方法。
と、異なる試験方法を使用しています。
試験液の割合の違いによるもの?
ウイルス液:試験液の割合は、
国立感染症研究所 19:1
北里大学 9:1
でした。
(試験方法の詳細は、資料3のP10~24に掲載されています)
参考:新型コロナウイルスを用いた代替消毒候補物資の有効性評価にかかる検証試験の中間結果について/資料3 ※ PDFが開きます
上記以外にも有機物に次亜塩素酸が反応して無効化された? など、いろいろなことが考えられますが、これに関してはさらに検討されると思いますので、6月中旬以降の最終結果を待つのがいいでしょう。
検討委員会では「現段階では判定に至らず、引き続き検証試験を実施する」としています。
その他機関での検証方法
ちなみにこちらの記事でも書きましたが、過去の論文(2)で、5秒でインフルエンザウイルスを不活化した際の検証方法については、
TCID50法
pH5.0-50ppm
ウイルス液:次亜塩素酸水 1:9
でした。
また、2020年5月14日に帯広畜産大学が発表した研究結果(3)では
TCID50法
pH 2.5-74ppm
ウイルス液:次亜塩素酸水 1:9
で、反応時間1分で検出限界になりました。
ただし、第2報では、
とされています。
10分でも検出限界には到達せず、ウイルスが残存していたとのことです。
追加の検証で15倍(ウイルス液:試験液=1:15)にした場合は、1分の反応時間で検出限界までウイルスが不活化されたとのことです。
結論として、
- 次亜塩素酸水の不活化活性は、酸性度ではなく含有遊離塩素濃度(ppm)に大きく依存していると考えられる
- 含有遊離塩素濃度が低い次亜塩素酸水でも、十分な量を用いれば短い時間でウイルスをより強く不活化できる
ことが示されたと報告されています。
注
(1)CPE:ウイルスが増殖し、細胞が破壊されたり、形態が変わってしまう変化。ウイルスの増殖を知るための指標として使われる。
(2)参考:各種病原微生物に対する弱酸性電解水の効果(環境感染 Vol.14 no.4 1999)※ PDFが開きます
(3)参考:(研究成果の発表)新型コロナウイルスに対する次亜塩素酸水の不活化効果を証明 第2報【令和2年5月26日更新】
※ 2020年5月26日現在 「本研究結果は学術雑誌に投稿中であり、現時点では未発表となっている」旨の広報がなされています。
- 論文・研究については、発表されているものすべてが正しいというわけではありません。あくまでも研究結果の発表であり、時間をおいて反証論文などが出てくることもあります。研究結果に関しては、それぞれが個人の責任でご判断ください。
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大切なことは正しく知ること
次亜塩素酸水に関しては、さまざまな製品が出ていて、その中には「これ大丈夫?」と思うものも少なくありません。
私たちがするべきなのは、
- 正しく知ること
- 最新の情報を知ること
- (その上で)製品の状態を実際に確認してから使うこと
です。
次亜塩素酸水の確認方法は、こちらでも記事にしています。
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特に、Twitterなどでは誤った情報や、売りたいがためにことさら有効性を強調するような情報があっという間に拡散します。
その中から、正しい情報を選ぶのはなかなか大変ですが、次亜塩素酸水については、経産省・NITE・国立感染症研究所・北里大学などがタッグを組んで検証を進めてくれています。
高い生成器などは、NITEの結果が出るのを待ってから買っても遅くありません。
(私はその前にジアイレーサーを買ってしまいましたが……)
次亜塩素酸水については、電気分解法以外で生成したものについても検証がなされるそうなので、その結果も楽しみに待ちたいと思います。
次回の検討委員会は6月中旬~下旬の予定とのことです。